ラ・ラ・ランド

お堅い優等生映画かと思ったら、人間味溢れるお茶目な優等生映画だった!

 

※今回はネタバレなしです。ネタバレありの、2回目鑑賞後の感想はこちら。

 

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予告編を観て、ライアン・ゴズリングとエマ・ストーンの演技もストーリーも、手堅い優等生っていう感じかな?と思っていました。

その印象は間違っておらず、確かに優等生は優等生なのですが、決して没個性ではなく、静かながら素晴らしい余韻を残してくれました。


画面いっぱいに溢れる色たち、そして降り注ぐ音楽。映画開始から30分くらいは静かな展開ですが、その後の加速感がすごい。

IMAX上映がなされると聞いたときは「ミュージカル映画にIMAX?」と思ったけど、そんなことを思った自分に「甘い!」と言ってやりたいです。IMAXの大きくて発色のキレイなスクリーン、そして立体的な音響のもとでこの映画を観たら、全身が魔法にかけられたようになるんじゃないかな。

 

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屁理屈こねて軽口叩いて頑固なセバスチャン(ライアン・ゴズリング)と、皮肉屋で現実的だけど心の中の情熱は人一倍のミア(エマ・ストーン)。

セバスチャンはレストランの雇われピアニスト。オーナー(J.K.シモンズ)には大衆向きのポップスを弾けと再三言われているようだけど、ジャズへの情熱に溢れる彼はついつい命令を聞かず、クリスマスの日にクビになってしまいます。

そしてミアは、友達と暮らすフラットの自室の壁をイングリット・バーグマンの大きな絵で彩るほど、女優への憧れが強い女性。映画の撮影スタジオの中にあるカフェで働いていて、オーディションを受けては落選する日々。

 

そんな2人の作り出す、ストーリーは全く違うもののなんだかメリーポピンズを思わせるような楽しい世界にニコニコさせられ、ホロっとさせられ、そして最後は少し切ない余韻が残る。
ラスト15分くらいの映像があまりにも夢みたいですっかり魅せられ、この映像にずっと浸っていたいと感じました。

 

この映画の不思議なところは、テーマ自体は監督の言う通り「叶う夢もあれば叶わない夢もある」という至極現実的なテーマで、登場人物(というか主人公2人)も現実に即したキャラクターなのに、物語が展開される舞台が文字通り"舞台"みたいで、どこか浮世離れしているところ。

夢か現か分からぬ世界で繰り広げられるお話だからこそ、現実の厳しさや切なさをも描いていながら観客の心に刺さりすぎることがなく、あくまでエンターテイメントたりえているのかな、と。まるで苦い薬をお砂糖でコーティングしたかのようですね。

 

セバスチャンとミアが3度目に偶然出会うホームパーティーのシーンでは、『小悪魔はなぜモテる?!』(この邦題最低ですよね…原題は"easy A")を彷彿とさせるようなキュートな顔芸とダンスを披露してくれて、エマ・ストーンの面目躍如といったところ。

そしてライアン・ゴズリングも、ただの屁理屈軽口野郎な面と、夢がなかなか叶わないもどかしさを抱えた切ない表情のコントラストが絶品。

あと、ミアの同居友達として、『エクス・マキナ』の人造人間役で強烈な印象を残してくれたソノヤ・ミズノさんが出演されていたのが嬉しい驚きでした。

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↑黄色のドレスの方です。

 

カップルで観ても、同性同士で観ても1人で観てもいいけれど、観たあとはきっと、楽しさと少ししんみりした気持ちと夢心地とがないまぜになって、しばらく余韻に浸っていたくなると思います。

 

と、ここまで褒めてきましたが。

この映画、近年のミュージカル映画が避けてきた「登場人物が何の脈絡もなくいきなり歌い踊る」をふんだんにやってのけております。もともとミュージカル映画ってそういうものだったと思いますし、だからこそミュージカル映画を苦手とする方は理由として「いきなり歌い始めたり踊ったりするのは変」「普通に喋ればいいのになぜ歌う?」というようなことを挙げてきたわけです。そして例えば『シカゴ』なんかは、歌と台詞とが出来るだけ分断されないような演出にこだわっていました。

でも、この映画はオーソドックスなミュージカル映画の手法を取っています。歌も踊りも唐突ですし、なおかつ台詞パートの雰囲気をぶった切っている感もあります。これだけでミュージカル映画が特別好きというわけでない方は逃げていきそうですが、さらに言うと、冒頭と中盤に少々ダレるシーンもあります。

それでもこの映画はラスト15分の夢のようなシーンだけでも価値があります。そしてラストに観客が夢を見られるのは、それまでのシーンの積み重ねがあるからなのです。

 

 

 

キュートすぎるエマ・ストーンの虜になる確率100%。

 

ライアン・ゴズリングとエマ・ストーンの共演作。
テカテカでチャラいライアン・ゴズリングが笑えます。