エンド・オブ・ホワイトハウス

『マグニフィセント・セブン』がもっと日本でヒットしますように…ということで、本日は同じアントワン・フークア監督作の『エンド・オブ・ホワイトハウス』の感想を。

 

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『マグニフィセント・セブン』についてはこちらの記事をご覧ください。

ネタバレを含む感想はこちら。

 

原題はポスター画像を見ていただいてお分りの通り、"OLYMPUS HAS FALLEN"、つまり"ホワイトハウス陥落"。この言葉はそっくりそのまま、劇中にてシークレットサービスの一人の台詞として登場します。

ホワイトハウス陥落ものと言えばですね、同時期に公開された、チャニング・テイタム主演の『ホワイトハウス・ダウン』も有名ですよね。こちらについてもいずれ記事にできればと思っていますが、ものすごく雑に言うと、『エンド・オブ・ホワイトハウス』のほうがシリアス路線(サスペンス風味)で、『ホワイトハウス・ダウン』はエンターテイメントアクション寄り。

どちらも面白い映画だと思いますが、個人的には『エンド・オブ・ホワイトハウス』のほうが好みだったりします。

 

 

『マグニフィセント・セブン』でも思ったのですが、アントワン・フークアという人は、本当に俳優の魅力を増幅させてカッコよく撮るのが上手い。もちろん本作の主演であるジェラルド・バトラーはもともとカッコいい人ではありますが、全編を通して、彼の持つ野性味がとことん活きています。

 

本作の主人公であるマイク・バニング(ジェラルド・バトラー)は、アメリカ大統領(アーロン・エッカート)の警護をするシークレットサービスの一員。大統領のみならず、大統領の息子にも深く信頼されています。ところがある日、移動中の不慮の事故で大統領夫人が亡くなってしまいます。マイクの判断は正しかったのですが、シークレットサービスを外れ、財務省での内勤の仕事に異動することとなります。

そんな中、韓国の大統領がホワイトハウスを訪問。厳重な警備が敷かれる中、突如飛来した所属不明の飛行機が、ホワイトハウス周辺を銃撃。飛行機はアメリカ軍によって撃墜されるものの、多数の死者が出ます。さらに飛行機による銃撃に続く形で自爆テロが起き、ホワイトハウスの外柵が爆破されてテロリストたちが敷地内に侵入。奮闘虚しく、圧倒的な火力の差の前にシークレットサービスは全滅してしまいます。また、アメリカ大統領や閣僚、そして韓国大統領たちは"バンカー"と呼ばれる緊急避難用のシェルターに逃れますが、韓国大統領の警備として潜入していたカン・ユンサク(リック・ユーン)たちにバンカー内を制圧されてしまい、人質となります。

 

逃げ惑う民間人たちが飛行機からの銃撃で蜂の巣にされ、アメリカの象徴でもあり厳重な警戒体制の敷かれたホワイトハウスがあっという間にテロリストたちの手で陥落してしまう場面は、あまりの惨状に、フィクションだと分かっていても目を覆いたくなるほど。ボロボロになった星条旗がテロリストの手でうち捨てられるシーンなどは、恐ろしいほどの絶望感を感じました。

 

この映画では、主人公も敵もあまりにも冷徹かつ容赦無く人を殺していきます(おそらくそれゆえのPG12指定)。主人公も、椅子に縛り付けた2人のテロリストのうちの1人をナイフの一撃で殺してしまうなど、スタイリッシュでカッコいい主人公としては描かれていません。その容赦の無さによって、絶望感と緊迫感が極限にまで高められています。ただ、不快感のあるような描写はされておらず、グロテスクさもありませんので、あまり残酷すぎるものは…という方もおそらく大丈夫ではないかと。

 

また、絶望感と緊迫感だけの映画だと個人的には精神的にけっこう辛い部分もあるのですが、主人公マイクがどんどん敵を倒していくので、多少の安心感があるのがこの映画のいいところ。

安心感の塩梅って結構難しいと思っていて、安心感がありすぎると007シリーズやミッション:インポッシブルシリーズのようにエンターテイメント/アクション寄りになってくるのですが、この映画においては、マイクの強さがホワイトハウス陥落、そしてあまりにも多くの犠牲者が出ていることで感じる観客の不安に対するいい救いになっていると思います。でも主人公が無双しまくるエンターテイメントアクションもスカッとして面白いですけどね!

 

飛行機による銃撃を受けてホワイトハウスの前に駆けつけたマイクが、シークレットサービス時代に培ったであろう正確な射撃を駆使してホワイトハウス内に潜入するシーンだけでもかなりの見応えがあります。木の陰、塀の陰に隠れながら確実に相手を仕留めていくジェラルド・バトラーは本当に渋い。

 

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マイクはどちらかというと寡黙なキャラクターで、映画冒頭では大統領夫人を救えなかったという後悔と、シークレットサービスに戻って大統領のために尽くしたいのにそれが叶わないというもどかしさを身にまとった姿が哀愁を漂わせるのですが、ホワイトハウス陥落という未曾有の事態、しかもそれを解決できるのは運良くホワイトハウス内に潜入できた自分ただ1人という絶望的な状況の中、弱音を吐くことも動揺をあらわにすることもなく、1人また1人と敵を倒していく姿は職人のよう。

 

アメリカ大統領役のアーロン・エッカート、そして大統領・副大統領が人質となってしまったことで大統領代理を務めることとなる議長役モーガン・フリーマンも、次々と犠牲になる人質やホワイトハウス陥落という事実に対して、直接的な台詞はないながらも苦悩に顔を歪ませ、それでも毅然と事態に立ち向かう姿が観客に勇気を与えてくれます。

こういう異常事態発生系の映画によく出てきがちな、現場の意見を聞かずに暴走した挙句、大惨事を引き起こす登場人物がいるのはご愛嬌(笑)

テロリストのリーダー役リック・ユーンは、『007 ダイ・アナザー・デイ』にも敵役で出演してましたね。けっこう不気味な存在感がある人だなと思います。

 

静かめの演出で、派手な爆発シーンなどもほぼないのですが、渋い男の魅力に酔いしれたい方にはオススメの映画です。『マグニフィセント・セブン』にハマったという方は必見。

 

 

 

ロンドンが舞台の続編。(原題は"LONDON HAS FALLEN")