アースクエイクバード

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11月15日よりNetflixにて配信開始された、アリシア・ヴィキャンデル主演、小林直己(三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE)・ライリー・キーオ共演の『アースクエイクバード』を見た。

 

Earthquake Bird | Netflix Official Site

 

1980年代の東京(と佐渡島)が舞台。日本の描写はトンデモではなくごく普通の日本、だが外国人にとってはおそらく異国情緒を感じられる切り取られ方で絶妙。

アリシアちゃんの日本語演技はとても自然で、ものすごく努力したんだろうなと推察される。

 

配信前に公開されていたインタビューでも書かれていたけど、アリシアちゃんは寡黙な役が多く思える。実際には今回の役はけっこう台詞があるのにそういう印象を受けるのは、彼女の地に足のついた抑えた演技によるものかな?

 

過去に何かあるらしく鉄壁の武装でなかなか心を開かないルーシー(アリシア・ヴィキャンデル)と、同じく過去を明かさない点では同じだけど人と関わろうとするテイジ(小林直己)、そしてジ・アメリカンガールなノリと出で立ちだけどふとしたところで真面目なリリー(ライリー・キーオ)の対比がとても良い。

 

アリシア・ヴィキャンデル、EXILEの小林直己と共演「EXILEのビデオはたくさん観たの」 - 映画 Movie Walker

 

 

※以下、ネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この展開は既視感があると思ったらやはり、という感じだった。『キリングミーソフトリー』はミスリードだったけど今回は大多数の視聴者の読み通り、といったところかな。

ストーリーはだいたい予想がついたものの、見ている間はハラハラはした。


変な言い方かもしれないけど、ルーシーは外国人の設定なのにすごく日本人的な役柄だった。感情を押し殺して、今いる環境に必死に自分を押し込めて合わせようとする感じ…。彼女の場合は過去の辛い記憶と向き合いすぎないためにそうせざるを得ないんだけどね。

 

終盤で刑事が言ったように(ここの展開は少し強引というか刑事がそんな会話するかな?と思ったりした)、「我々はみんな自分の現実の中で生きている」んだよね。地震の直後にだけ鳴く鳥(=アースクエイクバード)がいると言われればそこに何もなくてもそう思えてくるし、そうしたらアースクエイクバードはその人にとって現実になる。

看護師だったことを知って少し意外に思って見直した面もあるにせよ、ルーシーの中でリリーは日本語を全く話せないのにフラフラと東京へやってきて、喫茶店での注文すら自分にさせようとする無責任でいい加減で気の多い女性だったんだろう。ルーシーは、過去に囚われて自分の殻から出られない自分と違って奔放に生きているように見えるリリーにどこか惹かれてもいたのかもしれない。だから自分を誘惑するような態度のリリーの幻想を見たのかなと思った。

そしてルーシーの中でのリリーがそんな存在だったからこそ、客観的に冷静に考えればもっと早くたどり着けたかもしれないはずの事実から無意識に目を背けて、自分がリリーを殺したのかもしれないだとか、テイジとリリーが駆け落ちしたのかもしれないだとかいう考えがルーシーの中での現実になってしまっていたんだろう。

辛いことが起きるたびに自分を守るために環境を変えて生きてきたルーシーだけど、自分を傷つける現実から逃げることをやめて自分の心(直感?)と向き合って出会った真実がやはりまたルーシーをひどく傷つけるものだったのがいたたまれない…。

最後のシーンで、自分だけが死にとり憑かれているのだと思っていたルーシーが、なんでもないように生きている他人もまたそういう考えを持っていることに気づいたのが救い。

 

そういえばルーシー、テイジとの関係性では相手の顔色をうかがってばかりで臆病なのに、リリーにはすごく厳しい面を見せたりするのがリアルだった。

 


撮る側撮られる側ということで、個人的に海外ドラマで好きなエピソードの3本の指に入る『ザ・クラウン』2-4のマーガレットとスノードン伯爵を思い出した。

あちらは緊迫感がありつつも色気がだだ漏れで、写真を撮ってるだけでこんなにセクシーなんてことがあり得るのかと驚いたけど、この作品は怪しいテイジとなかなか心を開けず身構えるルーシーとの緊迫感がなかなかのもので、これまた写真を撮ってるだけなのにハラハラ。

写真のシーンはエロスというより緊迫感が前面に出ていたけど、そのかわり(?)クリスタル・ケイ出演シーンでメイン3人が踊っているシーンははちゃめちゃにエロさを感じた。